2008年12月7日日曜日

桃月庵白酒ひとり会

ももげつあんしろさけ、
と書いて「とうげつあんはくしゅ」と読みます。

ただいま、贔屓にしている噺家さんの一人です。
五街道雲助師匠の一番弟子、五街道喜助さんが、
真打ち昇進とともに襲名したのが「桃月庵白酒」です。

その白酒師匠のひとり会へ、先週の水曜日に行ってきました。

猫と金魚
肥かめ
明烏(あけがらす)

の三席でした。

猫と金魚は、田川水泡さんという方の創作落語だそうです。
大事な金魚を猫にいたぶられる旦那が、
頭の虎さんに猫退治を頼むが、実は虎さん猫ぎらい。
風呂場に猫とともにおしこまれると、キャーキャー悲鳴を挙げる始末。
助け出されて「虎なのに」と旦那になじられると
「名前は虎でも、この通り濡れ鼠になりました」
で落ちる噺なのですが、白酒師匠は、「そんな落ちで許すと思うか」と続け、
通りすがりの旅人に頼みましょう、と番頭さんに言わせる。
そして「旅人だけに、またたび」云々で結んでました。

ふーむ。白酒師匠の工夫なんだろうか???

肥かめは、グロい。
一緒に聴きに行ったお友達のいつもは威勢のいい姐さんは、
「あたし、この噺だめ」とぐったりでした。
要するに、お金のない二人が、兄貴の結婚祝儀にと、
古道具屋で安く買った肥かめを水かめと偽りもっていく。
そこでなんと、肥かめに汲んだ水をつかって、
冷や奴、青菜のおひたし、あげくの果ては白飯をふるまわれる。
むむぅ。。。。
食品偽装など、やな話が多い世の中、
こういう話が素直に笑えないんでしょうね。
それでいうと「うちの若い衆」は、私が笑えない話です。
なんでも人をたてるのがいいんだよ、と教えられたおかみさんが、
何か誉められるたびに使用人をたてて
「うちの若い衆がやってくれた」と一つ覚えで繰り返す。
「かわいい坊やだね」と自分の産んだ子を誉められ、
「うちの若い衆が、よってたかってこさえてくれた」と言ってしまって落ち。
笑えないなぁ。

明烏は、クソまじめな若旦那が、
少しはこの子も柔らかくなった方がいいと、
吉原になんと親の差し金で行かされてしまうのですが、
花魁「浦里」にそのうぶさを気に入られちゃって、
その夜のうちに大人になっちゃう。
これは若旦那「時次郎」を、どれだけ清潔ぼうやに描けるか、が肝かなぁ、
と私なりに思ってる噺です。
清潔ぼうやなら、林家たい平さんが巧いな、と思っていましたが、
白酒師匠もよかったわぁ。
白酒師匠の新しい一面が見られて、得した気分。

明烏は、好きな噺の一つだなぁ。

一番、白酒師匠が高座にかけた噺の中で、
師匠の持ち味が出ていて、しかも私が好きな噺は、
「妾馬」ですねぇ。ダメな兄貴「八五郎」が
散々笑かしてくれた後、妹と母を思う心情吐露で、
ぐぐぐっと胸に迫る。泣くでしょう、普通。

さて今年は、あと一席、三遊亭鳳楽さんの「芝浜」でおしまい。
いい噺で終われることに、感謝です。

来年も、希望に満ちている、そんな気分で追われるに違いない、
「芝浜」はいい噺ですね。まったく。

2008年11月20日木曜日

タイガー&ドラゴンにみる、落語オタク。

「泣かせてぇんじゃねぇ、笑わせてぇんだよ」

俺の、俺の、俺の話を聞けー、で有名な
宮藤官九郎脚本「タイガー&ドラゴン」を、夢中で観ていました。

小学生の頃、NHKの「南総里見八犬伝」を観るために、
外で遊んでいてもダッシュで家に帰ってTVにかじりついていた、
あの時と同じような気持ちで、毎週、毎週楽しみにしてました。

何が面白かったかと言えば、いろいろあるのですが、
第一に、落語オタクの生態がうまく描けていたところ。

尾美としのり扮する落語オタクが、寄席へ行く。
噺に入る前の四方山話「まくら」で、これから話す落語のタイトルを推察する。
「芝浜、だねー」得意満面で言う。噺が始まると、
「ほらー、芝浜だろー」とまた得意満面。

これが、自分でもできるようになりたい、と麻生芳信の「落語百選」を
春編、夏編、秋編、冬編買い込み、すべて読みました。
寄席では、まくらの話の内容と季節、噺家さんの得意分野から推察。
「これは、野ざらしでしょう」なんて心の中で呟き、手帳につける。
これが、ようやくできるようになってきたある日、
「あれ?話が変わった」という現象に出くわしました。
実は、噺家さんには、自分が本題に入った時、客席で
得意満面で手帳にメモる落語オタクが見えているんですって。

「そうは行くか」と、変なプロ根性で、
噺を急に変えたりなさるのだそう。

プロが嫌だと思う事はするまい、
と以後は噺の途中でメモる行為は慎んでいます。

素直に、気楽な気持ちで、
俺の、俺の、俺の話を聞けー。

これが噺家さんの、心の叫びでしょうか。

2008年11月19日水曜日

12月といえば、芝浜です。

クリスマスツリーが街にあふれ出す頃。
ああ、今年も「芝浜」の季節がきたか、としみじみします。

「芝浜」といえば、円朝作の三題噺ですね。
飲んだくれでどこか憎めない亭主と、愛情深く賢い女房。
物語の大どんでん返しの鮮やかさもさることながら、
夫婦のむつまじさとサクセスストーリーの心地よさで、
年の瀬に一度は聴きたい名作落語だと言えます。

三代目の三木助が得意としていた大根太ですが、
鈴本で息子の四代目三木助で聴いたのが初めてでした。
淡々と演じていらして、通の方からは「下手」なんて
評価もあったみたいですが、何人もの噺家さんの、
それぞれの解釈の「芝浜」を聴いた今も、
三木助さんの「芝浜」は忘れがたい味がありました。
その後、三木助師匠はお亡くなりになりましたねぇ。。。
偉大な父親を持つと、苦しいものなのでしょうか。
喬太楼師匠に、三木助師匠のおかみさんにどことなく似てる、
と言われたので、三木助師匠のことは、
今でもなんとなく、気になっちゃってます。

ということで、私の書斎には、三木助の提灯があります。

今年の「芝浜」はどなたで聴こうかなー。

暮れの楽しみの一つです。

2008年11月17日月曜日

笑ったり、泣いたり、したいんです。

12年前、古今亭志ん輔さんの落語を聞いて以来、落語オタクとなりました。
落語オタク、という響きは大変、芳しくないので、勝手に「オチ・オタ」などと命名。
パリ・コレ風の味付けを施しております。

さて、仕事の合間を縫って1ヶ月に1度は、居酒屋落語やホール落語、寄席に通ってます。
数えてみたところ、1年間でちょうど100席聴いたことになるようです。
今年は少ない方なんですねー、これで、、。
なんか研究してるわけではないです。
ただ、ただ笑ったり泣いたりしたいがため。
地方出身のばりばりワーキングウーマン(鬼)としては、
たまには「あったかい」ところに触れたいんですねー。

ということで、聴いた落語やひいきの落語家さんのこと、
思いついたままに、書いてみたいと思います。